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『さすらい』 ③

“ちょっと!布団あげて貰わないと困るじゃないの!若い人はどうしたの!”
女中にどやされる寝起きの源さん。日はもうだいぶ高い。
言われてみるとトオルがいない。
あの野郎とうとう逃げやがったか…ひとりごちる源さん。
俺もひでえことやらしちまったかな…。
さすがの源さんもすこし反省。
その頃トオルはゲイバーのママのもとへ。
“だいぶ酔ってるわね、大丈夫なの?”
“大丈夫だよ!ビール!”
昼間から泥酔するトオル。
“番頭なんかいつだってやめてやらあ!てめえはなんにもしないで…”
“お兄さんどこの旅館?”
“千代乃湯さ!くそ親父と住み込みさ。ま、でもあそこも長くないな。ざまあみろってんだ”
“あんた、源三さんの息子さん?”
首を縦に振るトオル。
“そう…源さんの息子なの。奇遇ねぇ…ちょっと。源さんの本質ってすごく善良で漢気があって、たくさん詐欺っぽくて、でもあたしは好きよ”
“親父みたいな自分勝手な詐欺師なんて殺してやりてえよ”
“あんたにはまだ源さんのよさがわからないのよ、わかってやらないと可哀想よ”
“顔も見たくねぇよ!”号泣するトオル。
股間をまさぐるママ。そのままプレイに…。


さすらい-20


夜。
眠りから覚めた源さん。
“トオルは東京へ帰ったのか。さて、一風呂あびるか”
源さんが風呂場へいくと、平尾と若旦那が。
“若旦那、明日中に書類を全部そろえておいてくださいよ。間違いなく3000万の内金として300万をお渡ししますから”
“すみません、これで張り切って商売ができますよ”
平尾、若旦那の股間をつかむ。
“やめてください”
“若旦那、私は欲得抜きであんたのために奔走してるんです。若旦那が可愛いんですよ。許してください”
“でもこんなことしたら”
“わかりました、じゃあ話はなかったことに”
“いまさら困ります”
“いいでしょ、誰にもわからないんだから。ねえ、若旦那”
平尾はねちっこく愛撫すると、若旦那の体を求める。
その一部始終を見届ける源さん。


さすらい-23


翌朝。
平尾が旅館をあとにする。
見送る若旦那。
“おかげで助かりました”
“300万、無駄づかいするんじゃないよ”
“わかってますよ”
“じゃ”
その晩、源さんはゲイバーで泥酔していた。
“ちょっと源さん、ピッチがはやいわよ”
“どうしても許せねえんだ、どうしたらいいかね”
“脅かすのは源さん得意でしょ”
“脅かせばいいのか、簡単だ”
“事件はだめよ”
“そうか、おとなしくか、それじゃ女でいくか”
“平尾は女はだめよ”
“ん? 女がダメなら男でいこうじゃないか”
“前に若い男を紹介したことがあるわ。だからって自分の息子にそこまでやらせることはないわよ”
“あ、あれはな、俺の本当の息子じゃないんだ。俺の唯一の若い衆なんだ。しかし考えてみればいくら他人とはいえ、ちいと可哀想だな。この件は却下だ”
“そう簡単に却下しないでよ、正義のためよ。きちんと話せばわかってくれるわ”
“正義のためか。じゃあもう一度頼んでみるか”
“もう一度って前にもやらせたことあるの?”
“別の正義なんだよ”
“じゃ、彼に明日電話するわ。場所は店の二階でいいわね”
翌日。
平尾のもとにトオルが現れる。
好色な平尾はトオルに酒をふるまい酔ったところで犯そうとする。
と、そこへ源さんが。
“なんだお前!”
“おやっさん…!”
“俺はこいつの親父だ。文句あるか!”
“い、いえ…”
“いま外で聞いてりゃこいつに変なこと要求してこの始末はいったいどうつけてくれるんだ!警察呼ぶか?”
“おとうさん、警察はやめてくださいよ…話し合いでいきましょう”
“おお、いくらでもやりましょう。こいつの将来にいい話し合いならいくらでも”
“5万円でどうでしょう…7万円で?”
“人を馬鹿にすんな、いい加減にしろ!”
源さん、封筒の書類に手を伸ばす。
“これさえありゃ文句はねえんだ、とっとと失せろ!”
“それは勘弁してくださいよ、重要な書類なんです”
“詐欺の書類だろ?”
“おい爺さん!黙ってりゃいい気になりやがって! 言いたい放題抜かすんじゃねぇこの野郎!”激高する平尾。
“おお、威勢がいいねぇ。そうかいそうかい”どこ吹く風といった様子の源さん。
“これは3000万になってるが300万しか出さないでひと様のものをとりあげるなんて見上げたもんだよ屋根やの褌だ。この委任状ですべて終わらすなんて世の中そう都合よくいかねえんだよ。向島にも言っとけ! おう、トオル、帰るぞ!”
源さんとトオル、引き上げる。
首尾よく旅館を守ることに成功した源さん。だが、平尾たちが黙っているはずもなく…


さすらい-26

『さすらい』 ②

翌早朝。
トオルは旅館の仕事をせっせとこなしていた。
“おやっさん、まだ寝てるのかな”
トオルの想像通り、源さんはまだ夢の中。
“ああ、よく寝た。トオルのやつちゃんと仕事してるのかな”
朝もだいぶ経ってからようやく源さん御目覚め。
と、その頃若旦那は平尾不動産と応接室で会談中。
“若旦那、3000万くらいならあてがあります。この平尾にお任せください”
“よろしくお願いします”
“とにかく謄本、印鑑証明をお忘れなく。この委任状は私が預かりますので”
“これで安心だ”
若旦那と平尾の会話を盗み聞きしていた源さん、これはどうも胡散臭いと勘繰るが…。


さすらい-10


外へ抜け出そうとする源さん、が、女中に見つかってしまう。
“源さん、あざみのお客さんがおでかけだから、お布団よろしくね”
“へいわかりやした! トオル、わかったな”
源さん、仕事はトオルに任せて自分は適当にやり過ごす。
と、そこへ向島社長が登場。
“お、源さんじゃないの!”
“向島社長!これはお久しぶりでございます”
源さんと社長は旧知の仲。
“まさかこの旅館やってるんじゃないよね”と社長。
“そんな金はありませんよ”と源さん。
“この前あったのはどこだっけね”
“新宿二丁目ですよ。あのとき社長にご紹介しようとした少年が手付金だけもってとんずらしましてね…探すのに苦労しましたよ。その節は失礼しました”
“もう、一年になるかねぇ…で、前金はまだ生きてるんだよね”ジロリとにらむ向島社長。
これにはさすがの源さんもしどろもどろに。
“ところで源さん、こんな田舎にもゲイバーはあるんだよね?”
“へ、へえ”
“だからさ、ひとりやふたりはいるんじゃない?”
“困ったな…あ、いましたよ!特上が!”
“さすがさすらいの源さんこんなところでも顔が利くんだね”
好色な向島社長、金をはずむからその青年と会わせろという。
社長が出した金をひったくる源さん。


さすらい-12


“なんでぼくがそんなことを!?”とトオル。
源さんはあろうことか舎弟のトオルを向島に売ろうというのだ。
“お前、俺の為ならなんでもするっていったのは嘘か?俺をペテンにかけたのか!”すごむ源さん。
“もちろん本気ですよ!第一、父親を裏切れないでしょう”
“そうだよな”源さんはそういうと、このとおりだと頭を下げる。
“おやっさん…わかりましたよ”
トオルは源さんの頼みを聞いて向島社長のいけにえに。
その晩、向島社長はしきりにトオルに酒をすすめ酔わせ、酔い潰れたところで全裸にし…。
一方その頃源さんは地元のゲイバーへ。
“あら!あんたさすらいの源さんじゃないの!”とママ。
“なんだお前、二丁目の文鳥じゃねえか!”
“お久しぶり”
“おまえ、ここでなにやってんだ”
“失礼よ、見ればわかるでしょ。私がママよ”
“ママか、そりゃいいや”
“源さんこそこんなところでなにを”
“流れ流れてそこの千代の湯で番頭やってるんだ”
“へえ、でもあそこ長くないわよ”
“長くない?”
“それとも、乗っ取りにでもきたの?”
“乗っ取り?”
“さっきさ、ここの不動産屋と東京の社長ってのがきたのよ”
“向島の野郎か”
“聞くとはなしに聞いてたんだけど乗っ取りの話してたわよ。なんでも書類を全部取って、500万でカタつけようってさ”
“500万で? 向島の野郎そんなことを…トオルのやつ可哀想なことしたな”
源さんの予想通り、千代の湯はトラブルに見舞われようとしていた。
これはなんとかしないと…源さんは一宿一飯の恩を返すため、一肌脱ごうと立ち上がる。
が、翌朝。
源さんが目を覚ますと、トオルの姿はなかった…。


さすらい-18

『さすらい』 ①

夜の繁華街を疾走するひとりの青年。
彼は輩たちに追われていた。
青年はテキ屋風の中年男の前へ。
“おやっさん!縁日のショバ取りのインチキがばれました!どうしましょう!”
“どうしようもねえな。だからあそこの縁日は嫌だっていったんだ”おやっさんと呼ばれた男が口を開く。
“すいません…読みが甘かったんです”
“馬鹿野郎!物事はな!ちゃんとしないと筋が通らねえんだ!”中年男、青年を一喝する。
“またずらかりますか?”と青年。
“おい、火”そういうと中年男は煙草をくわえる。
“すいません”火をつける若者。
“さてと…空気のいいとこへいくか”


さすらい-1


ここは信州。
軽トラを降りのどかな川沿いを歩く中年男と青年。
中年男は源さんといい、青年はトオルといった。
“おやっさん!蛙ですよ蛙!”
“おお、かわいいな。食ってみろ、うまいぞ”
のんきなふたり。
やがてふたりはベンチで横になる。
“おやっさん、チョンボばっかりやってすみません。その代わりおやっさんのためなら火の中水の中なんでもやりますからそばに置いてください”反省の姿勢を見せるトオル。
“馬鹿野郎!捨てるとか捨てないとかおれたちゴミじゃねぇんだよ”そんなトオルに源さんはさすらいの美学を説くのであった。
野宿する覚悟を決めるトオル。だがそこは百戦錬磨の源さん、さっそく温泉街へ行き、住み込みの仕事を見つけてくる。
“今日から住み込みで番頭よ”
“番頭?”
“嫌なのかお前”
“なんでもやります”


さすらい-5


温泉旅館千代乃湯で働くことになった源さんとトオル。
だがもっぱらトオルが汗を流し、源さんはさぼってばかり。
風呂掃除もほどほどに一息つく源さん。
と、そこへ旅館の若旦那が。
“お背中流しましょう”要領のいい源さん。
“源さん悪いね”と若旦那。
“若旦那、板場もおやりになって大変ですね”
それを横目に苦い表情のトオル。
“あ、そうだ。明日の朝ベニマスを仕入れにいってくれ”と若旦那は源さんに頼む。
“若旦那、いい体してますね…明日は特別なお客でもお見えになるんですか?”源さんはそう訊ねながら、いやらしい手つきで若旦那の背中から尻をまさぐる。
“平尾不動産屋が紹介してくれた東京の社長で最近よく来る上客さ”
“上客ですか…”


さすらい-7

『3月1日(水)からの作品』

3月1日~14日

『たまあそび』
監督:大木裕之 脚本:南木顕生
出演:橋口保祐 石橋正邦 井上大地 葉月 螢 清岡恭久 南木顕生 阿部公彦

愛媛県松山市。明治期を代表する文学者であり、野球を愛したことで知られる正岡子規ゆかりの地で、
野球に青春を燃やした男たちが愛し合う姿をリアルな筆致で描く。  
社会人野球で名を知られた夏目は松山支社に出向となる。そこで彼は高浜と出会う。
高浜もスラッガーとして知られていたがチームメイト恋愛関係になり、退部させられていた。
ふたりの出会いはやがて…

たまあそび ポスター



『さすらい』
監督・脚本:小林 悟
出演:河合 純 山本清彦 沢まどか 牧村耕二 坂入正三 板垣有美 港 雄一

テキ屋の源さんと舎弟のトオルはわけあって都落ちし信州へ。
食い扶持を求めて転がり込んだ温泉旅館はなにやらきな臭い気配。
と、そこで旧知の社長さんと再会した源さんは目先の金に目がくらんでトオルを差し出してしまう。
ショックを受けたトオルは泥酔し、飛び込んだゲイバーのママに…
一方温泉旅館のピンチを察知した源さんは一宿一飯の恩を返すべく、一肌脱ぐことに。


さすらいポスター



上映時間
『たまあそび』 11:00 / 13:10 / 15:25 / 17:40 / 19:55
『さすらい』 12:10 / 14:25 / 16:40 / 18:50
オールナイト
『さすらい』 21:05 / 23:20 / 1:35 / 3:50
『たまあそび』 22:10 / 0:20 / 2:35

『THE FETIST 熱い吐息』 ③

その晩も姉と義兄はSМプレイに興じ、耐えきれないカズヤは家を飛び出す。
と、そこにまたしても画家が。
“頼むよ、どうしても君じゃないと!”
カズヤはとっさにナイフを抜く。
そのナイフを握る画家。
唖然とするカズヤ。
画家の命ともいえる右手に鮮血が…。


THE FETIST-24


…カズヤは画家のアトリエにいた。
画家の名前はトオルといった。
トオルのいうがまま服を脱ぎポーズをとるカズヤ。
怪我をした手でコンテをつかむトオル。
キャンバスにトオルの半裸像が描きあがっていく。
ひと段落ついて帰り支度をするカズヤにトオルは“この前汚しちゃったから”といい新しいナイフを渡す。


THE FETIST-25


あくる日、カズヤがアトリエにいくと、トオルの姿はなかった。
と、そこへパトロンの男が現れる。
“画材を買いに出かけただけだからすぐ戻ると思いますよ”とパトロン。
怯えるカズヤにパトロンはコーヒーを渡す。
コーヒーを飲んだカズヤは眠ってしまう。
パトロンは眠っているカズヤに襲いかかり…


THE FETIST-27
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横浜光音座 Ⅰ

Author:横浜光音座 Ⅰ
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