『愛の処刑』 ②

田所くんの死をつぐなうために先生は死ぬべきではないでしょうか。先生、切腹して下さい。
今林はそう言うと鞄から短刀を取り出した。
短刀の輝きが今林の顔を照らす。
大友は短刀を受け取る。どうやら本物の刀のようだ。
刀を見つめながら大友は考える。
こんなに鮮烈で幸福な死があるだろうか。男らしい割腹を見せてこの美しい少年を満足させてやるぞ…。


愛の処刑・19


大友の部屋で三方を見つけた今林が嬉々として切腹の作法を語り出す。
三方の上に和紙を敷き、その上に短刀を置く。
すっかり興奮した今林。
この体はもうぼくのものだ。ぼくの言いなりで一人の成熟した大人の男が死んでいくのだ…。


愛の処刑・20


井戸水で身体を清める大友。
じっと見つめる今林。
濡れた身体を拭き、六尺をきつく締め込む。
いよいよ切腹の儀がはじまる…。


愛の処刑・22

『愛の処刑』 ①

愛の処刑・1


広い日本家屋の中にひとりたたずむ精悍だがどこかやつれた憂いを感じさせる男。
彼の名は大友。教師である。
彼の家に通う家政婦が夕食を支度してくれたが、箸をつけるどころかろくに目もくれずにいる。
夕食は蠅帳をかぶったまま放置されていた。
彼は苦悩していた。
先日、彼の生徒、田所が肺炎で亡くなった。
体育の授業中ふざけた田所を罰として雨の中に立たせていたのが原因であった。
彼は責任を痛切に感じていた。
同時に自分自身を恐れていた。
田所は美しい少年であった。
大友は田所を愛していた。だが、打ち明けると田所に拒絶されるという思いも常に抱えていた。
その屈折した思いがああまでひどい仕打ちをさせたのではないか。
そのことが大友を苦しめていた。


愛の処刑・10


家政婦もとうに帰った夜更け。玄関で物音がする。
大友が覗くと、そこには土砂降りの中濡れた身体で思い詰めた表情を浮かべる美少年がいた。
彼の名は今林。大友の生徒であった。
大友は田所を愛していたが、今林のことも同様に愛していた。
ただ、愛の質が違っていた。
今林は田所と違ってもし愛を告げても冷笑してやり過ごしてくれそうだと考えていた。
大友は今林を部屋にあげた。
田所のことでやってきたという今林に、大友は教師を辞めるつもりだと告げた。
すると今林は「それでも先生は男ですか!」と一喝した。


愛の処刑・13


「先生は田所くんを愛していたんだ!そうに決まっている!」
まくしたてる今林。
大友はまるで心のつかえがとれたかのように語り始める。
報われない恋の恨みなどではない。田所に軽蔑されるのが怖い。今の自分は抜け殻と同じだ。死んでしまいたいとさえ思っている…。
「先生、責任をとる気はないんですか。田所君の死を償うために先生も死ぬべきではないでしょうか」
いささかの邪智も感じさせぬ表情で今林が言い放つ。
「先生。切腹して下さい」


愛の処刑・16

5月17日(水)からの作品

★5月17日~6月13日

『恋する男たち』
監督:池島ゆたか 脚本:五代暁子
撮影・照明:清水正二 音楽:大場一魅 録音:シネ・キャビン
編集:酒井正次 助監督:小川隆史 スチール:津田一郎
製作:セメントマッチ 提供:オーピー映画 
出演:桜井雅也 竹本 洋 河村 栞 兵頭未来洋 石川雄也 横須賀正一 蓮花 本多菊次朗 山ノ手ぐり子 神戸顕一

【解説】
「弟の恋人」「あいつの恋人」の2部からなるオムニバス。
「弟の恋人」
社会人の姉・桃子と同居する大学院生の竹雄。彼にはリクというパートナーがいた。
桃子の帰宅が遅くなると聞いた竹雄はリクを部屋に呼び、ふたりでリクが出演したゲイビデオを見ながら盛り上がる。
ところがそこへ桃子が帰宅しふたりは大慌て。
なんとかごまかして3人で酒を飲み、話をしているうちに、桃子がリクに恋してしまう…。
「あいつの恋人」 
会社員のかたわら、男手ひとつで幼子の世話をする秋彦。
その子供は彼の子供ではなく、想いを寄せる男・和哉の娘であった。
和哉はバンド活動で忙しく、子供の面倒をみる暇がなく、子供の母親の比呂美もまた、和哉と別れ単身香港で働いているのであった。
忙しい日々に勝手のわからない子育て、そしてなにより報われることのない和哉への想い…秋彦のセックスフレンドのユウキは秋彦のことが心配でならない。
ある日、ユウキがゲイビデオを持ってやって来た。それは無名時代の和哉が出演したものであった。
そのビデオを見た秋彦は…。


恋する男たちポスター


-5月30日まで-
『愛の処刑』
監督:野上正義 脚本:吉本昌弘
撮影:伊藤英男 照明:石部 肇
プロデューサー:伊藤文學
原作:三島由紀夫(榊山保名義)
製作:塁プロモーション 配給:ENKプロモーション
出演:御木平介 石神 一 板垣 誠 山本みよ子

【解説】
三島由紀夫が榊山保名義で発表した幻のゲイ小説『愛の処刑』を『薔薇族』編集長として有名な伊藤文學がプロデュースし完全映画化。
教師・大友の前に現れた美少年・今林。
彼は先だって亡くなった友人田所の死は先生に責任がある。切腹して償うべきだと大友に詰め寄る。
田所を愛していた大友は切腹する覚悟を決める。


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-上映時間-
『恋する男たち』 11:05 / 13:15 / 15:30 / 17:40 / 19:55
『愛の処刑』 12:15 / 14:25 / 16:40 / 18:55
★金・土オールナイト
『愛の処刑』 21:10 / 23:25 / 1:40 / 3:55
『恋する男たち』 22:10 / 0:25 / 2:45

『神々が消えた日』 ③

三人の秘密の浜辺で懐かしい話に花を咲かせるタカシとヒロシ。
ヒロシはいつもシンイチといた、とタカシが言う。
タカシのことが好きだったと打ち明けるヒロシ。
そうとは知らずシンイチに嫉妬していたタカシ。
砂浜に寝転がったタカシとヒロシはやがて互いを求めあう。


神々が消えた日・28


タカシとヒロシとの約束を守ろうと民宿を抜け出したシンイチ。だが力尽きて草むらに倒れていた。
その姿を発見した民宿のオーナーは再び彼を宿へ連れ帰る。
高熱で朦朧とするシンイチがあえぐ姿は官能的で、思わずオーナーはその体を欲してしまう…。


神々が消えた日・33


シンイチに会うのが恥ずかしいといって先に帰ってしまったヒロシ。
タカシは民宿の娘と出会い、シンイチがいま宿で手当てを受けていることを知る。
混濁した意識のなかシンイチは相撲をとっていた。
いくら取っ組み合っても勝てない相手にシンイチは何度も何度もぶつかっていく。
一方シンイチを取り囲んだ面々は一様に沈痛な面持ちで彼が苦しむ姿を見つめていた。
一体なぜシンイチがこうも苦しめられねばならないのか。シンイチがなにをしたというのか。
タカシの悲痛な叫び声がこだまする…。


神々が消えた日・44

『神々が消えた日』 ②

オートバイが転倒し浜辺に放り出されたシンイチを救ったのは近くで民宿を経営する男であった。
男はシンイチを民宿へ運ぶと妹と一緒に看病をはじめた。
貧血、だるさ…シンイチが起こしている症状は、不幸にも母と同じものであった。


神々が消えた日・16


シンイチの母の墓前には彼の幼馴染であるタカシがいた。
シンイチ、タカシ、ヒロシ。
シンイチの母によって兄弟同然に育てられた彼ら3人は、命日には3人揃って墓参りをする約束になっていた。
ひとり墓前にたたずむタカシの前にバラの花束を持った女性が現れた。
いぶかしむタカシに声をかける見知らぬ女。
彼女こそヒロシの変わり果てた姿であった。


神々が消えた日・19


墓参りをすませ砂浜を歩くふたり。やがてヒロシが顛末を話しはじめる。
店も家も金貸しにだまし取られ一家離散。多額の借金を返済するためにヒロシは踊り子になったのであった。
やがてふたりは小さな入り江に辿り着く。
そこは3人の秘密の場所であった。
一方、かろうじて意識を回復したシンイチはタカシとヒロシに会いに行こうともうろうとしたまま民宿を抜け出す。
シンイチがいなくなったことに気づいた民宿の主と妹は大慌てで捜索をはじめる。


神々が消えた日・24

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横浜光音座 Ⅰ

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